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1周年を迎えたさいたまの焼き菓子ブランド「PASTR’Y」を取材しました

こんにちは。
大宮駅東口でコワーキングスペース7F(ナナエフ)を運営する株式会社コミュニティコムによる地域メディア媒体「大宮経済新聞・浦和経済新聞」のライター・矢島です。

コロナ禍で「お取り寄せ」がより身近になった今日この頃。とっておきのお菓子をおうちで味わうのもなかなかいいものですよね。そんなお取り寄せにもピッタリ!店舗を持たず、オンラインショップなどを通じて大宮からおいしいお菓子を発信する焼き菓子ブランド「PASTR’Y(ペイストリー)」の1周年を大宮経済新聞で取材しました。

今回は、本編記事中ではご紹介しきれなかったエピソードなどを詳しくご紹介したいと思います!

大宮経済新聞の記事はこちらです。
さいたまの洋菓子ブランド「PASTR’Y」1周年 新たな女性パティシエ像目指し
https://omiya.keizai.biz/headline/1601/

   

「自分に足りないもの」を補い続けた10年間

   

今回、ブランドを主宰する廣瀬さんのお話を伺ってまず驚いたのは、思い切りの良さと、その経歴の豊かさでした。

「高校時代、友人のお祝いプレゼントするという機会に私が贈ったのが手作りケーキ。するとこちらが引いてしまうほどに友達が喜んでくれて。『自分のお小遣いで買った材料で、手間をかけて作ったお菓子がこんなに喜ばれるなんて!』と、それはそれは感動したんです」。この出来事が、廣瀬さんの人生を大きく変えることとなります。

  

主宰の廣瀬友理恵さん

  

「通っていた高校は『大学に進むのが当たり前』。私も美術系の道を考えていたのですが……アートは見る側に対してじんわり効いてくることが多いのに対して、お菓子はその場で手にして味わうことができる。そのフィードバックの速さに魅力を感じたんです。周囲の反対を押し切って、製菓の専門学校に進むことを決めました」。

   

そこからの経験値の積み上げが、それはそれはお見事!

    

専門学校と並行してケーキ店でバイトをし、卒業後は京都のホテルで3年間。
「グラスを並べるなどの下準備から始まって、幅広いジャンルのお菓子の経験を積めること、大人数のパーティーなどもあり大量のお菓子を作れることは、ホテルならではでした」と廣瀬さん。

   

その後、京都のケーキ店の細やかな仕事や味・見た目のクオリティの高さに魅了され、自ら電話をかけて数回直談判し転職。「果物一つ一つを見極め、用途を振り分けたり、というのはホテルではできなかったこと」だったといいます。

   

  

廣瀬さんの経験と技術が詰め込まれた「PASTR’Y」のお菓子たち

   

  

この店で1年半過ごす頃には、「テイクアウトではなく、ライブ感を大切にお菓子を提供したい」と思うようになり、銀座のフレンチレストランでデセール(デザート)を担当しますが、ここも1年で卒業したのだとか。

    

いずれも憧れの場を選んでせっかく仲間入りしたわけですから、短期間でどんどん場所を変えるのはもったいないと思わなかったのかと尋ねてみると、こんな答えが返ってきました。

    

「たった1年、というよりも、ものすごく濃い1年だったんです。1年でより深いその場所の魅力もわかるけれど、『もっとここを知りたい』『ここを磨きたい』という気持ちも芽生えてきて、次の道に進むのがごく自然な選択肢でした」。

    

   

手のひらサイズの「ミニパウンドケーキ」は詰め合わせで販売

    

廣瀬さんはその後、本編記事中でもご紹介した「レストランの立ち上げ」に3年半ほど関わりますが、何とここでは自ら、「海外研修の制度を作るべきだ」という企画書を提出したのだとか!社員初の試みだったといいます。

     

「フレンチ一筋だった私が、ここでの出会いで多国籍のデザートに触れ、魅力を感じ、『自分が海外に行ってみたい!』と思ったのが動機でした」と廣瀬さんは笑います。「その後企画は少しずつ前進してはいましたが、ある日はたと気づいたんです。『これは、先が長いぞ』って。(笑)」。そして、廣瀬さんは企画の完成を見ずに退職し、単身シドニーへと飛びました。

     

これが、すべて10代後半~20代のお話なのですから、その濃密さに驚かされます。

    

今いる場所を前提にするのではなく、「知りたい!」「やりたい!」を起点に場所を選んでいく。自分の「足りない」を生き生きと補い続けた10年間があったからこその「今」なのですね。

   

  

やっと出会えた心地よい肩書

  

そんな経験を支えに、1年前、自らのブランドを立ち上げた廣瀬さん。

ブランド名の「PASTR’Y」について、こんな風にお話してくださいました。

    

  

お菓子のイメージに合わせて、2種類のロゴシールを使い分けたパッケージ

     

「長くフレンチに携わっていたので、『パティシエ』『パティシエール』と名乗ることもありましたが、自分のキャラクターに合っていない気がして、なんだか気恥ずかしかったんです。さらにシドニーで自分の経歴を説明するときも、『パティシエ』はフランス語だから通じない。いろいろ単語を連ねて話していたら『あぁ、ユリエはペイストリーシェフなんだね』と言われて、『これだ!』と居心地の良さを感じました」。

     

それをそのままブランド名にした、というのが、ネーミングの由来。最後の「’Y」は、「友理恵」という名前の頭文字に重ねているのだそう。

    

そんな心地よい肩書とともに、本編記事中でもご紹介した「店を持つことにとらわれない菓子作り」というスタイルに行き着いた廣瀬さん。ここでようやく自然体でお菓子作りに向き合うスタートラインに立った、ともいえるのかもしれません。

   

  

「日常を豊かにする」お菓子作りたち

   

  

さて、そんな廣瀬さんが生み出すお菓子には、小さく心躍る瞬間が散りばめられています。

  

手に取った時の喜びから後味まで、お客さまの喜びをイメージしながら丁寧に作り上げる

  

眺めるだけでも幸せな、愛らしいくまさんの顔型のクッキー。

   

廣瀬さんの手でラム酒に漬け込んだフルーツを作ったパウンドケーキをひとかけら口に入れると、鼻からスッと香りが抜けて、しばらく余韻に身を任せたくなるほど。

   

ストイックなイメージが付きまといがちなビーガンも、「ラベンダー&ブルーベリー」など、その素材の組み合わせに思わず手を伸ばしたくなります。

   

  

大宮のカフェ「UP COFFEE」に卸すお菓子は、店のコンセプトに合わせてビーガンスイーツに

   

「お菓子って、カロリーや虫歯、体質によってはアレルギーなどを気にして、大人も子供も『ガマン』と隣り合わせになりがちですが…本来はとても生活を豊かにしてくれるものだと思うんです。――ブランドを立ち上げた頃は目の前のことに一生懸命で、『私は何を作りたいんだっけ?』と思うことも多かったのですが、ようやくこの1年で『安心して楽しい気持ちで食べられるお菓子を作りたいんだ』っていうところに、たどり着けた気がします」と廣瀬さん。

    

お店を持たないというスタイルの、知る人ぞ知る「PASTR’Y」。
なかなか廣瀬さんのお話を聞く機会がないであろうみなさんにとって、この「編集後記」がその裏側や思いに触れるきっかけになれば、とてもうれしいです。

    

  

PASTR’Y
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廣瀬さんのお菓子は、コワーキングスペース7F(ナナエフ)がある大宮駅東口から徒歩15分程度にあるカフェUP Coffeeでも取り扱っています。コワーキングの合間のお散歩にぜひ。