埼玉大学で開催された「触れる機械展ミニ」で未来の技術を体験してきました!

葭田准教授と、院生インストラクターたち

こんにちは。大宮駅東口でコワーキングスペース7F(ナナエフ)を運営する株式会社コミュニティコムによる地域メディア媒体「大宮経済新聞・浦和経済新聞」のライター・郡司と申します。

2024年10月26日、埼玉大学で行われた「触れる機械展ミニ」を取材してきました。こちらでは、記事に紹介しきれなかった展示や体験を、編集後記としてご紹介します。

大宮経済新聞の記事はこちらです。

埼玉大で「触れる機械展ミニ」 触覚を伝える技術を体験
https://urawa.keizai.biz/headline/934/

浦和経済新聞
葭田先生と院生たち
葭田先生と、中央大学、東京科学大学の院生たち

「触れる機械展」とは何か?

「触れる機械展」というタイトルから、何を想像しますか?機械“を”触れる、機械“で”触れる、いずれにしても面白そうですが、今回の展示はなんと、「そこに存在しない物に触れる機械」の展示。そんな、国民的猫型ロボットの秘密道具みたいな機械がもう、日本のさいたまに本当にあるというのでしょうか。これは、家族を置いてでも見に行かなくては!と単身、埼玉大学に向かいました。

埼玉大学総合研究棟

ただ、私自身はこれまで機械工学の領域とは無縁でした。先端技術への興味だけで取材を申し込んでしまった一般市民に、研究を理解できるのでしょうか。ふと不安もよぎります。

「脳科学×機械工学」へ、ようこそ

今回、取材を快く承諾してくださったのは、東京科学大学工学院機械系の葭田(よしだ)貴子准教授。京都大学で心理学を学んだ後、「脳科学」から機械工学へアプローチするという、日本ではまだ新しい研究を進められています。

株式会社ミューボーグの子ども用筋電義手

「例えば義手のような、人体の一部となる機械は、使用する人の心理が重要になってくる。いかに自分の身体と違和感なく使えるような機械にしていくか?脳科学や心理学が開発のカギになるんです」と葭田先生は話します。私はこの話を聞いて、義体化が一般化した世界を描いたとある漫画・アニメーションを思い浮かべました。漫画作品を持ち出してどう思われるかと思いつつも伝えると、「そう、行きつくところは、そのアニメの世界観」とのこと。研究室の皆さんも大好きで、開場前に医療機器メーカーさんの展示している機械義手を見て、「物語のあのシーンそのものだ」と盛り上がったそうです。葭田先生の「技術力がやっと、想像力に追いついてきた」という言葉も印象的でした。

「触覚」を再現・体感させる機械たち

今回の展示に参加したのは4つの研究室。ここからは、記事で紹介しきれなかった「触る」体験を紹介していきます。

触覚デフォルメロボット

辻研究室ロボット

埼玉大学でロボット工学を研究する辻俊明准教授の研究室からは、「他の人の感覚を追体験できる」ロボットを紹介。ここで体験させてもらったのは、ペン型装置でプラスチックの凸凹面をなぞった感覚を記録し、”再生”して体験するというもの。院生インストラクターさんの「再生しますね」と一言の後、持っていたペンが勝手に動いて、空中に凸凹面に触れた時の感覚が再生されて驚きました。

辻研究室解説画面

これは、ペン先で「触った」体験の「力・速さ・位置」の周波数を記録し、機械を通してその「波」の幅を大きくすること(=デフォルメ)で、他の人に動きを経験させることができる、というもの。言葉での説明は、わかりづらいですね。この研究が目指しているところは、言葉での説明ではわかりづらい「感覚で覚えろ」といわれるような技術を、「感覚で教える」ことだそうです。感覚を「感覚」で教えられる日が来たら、伝統工芸の技術を教えやすくなったり、手先の不器用さに悩む子どもたちにも力加減を教えやすくなり、やる気アップにつながるのではないかと感じました。

「ベトベト」が、スイッチ一つで「ヌルヌル」に!

高崎研究室ヌルヌル装置
両面テープのベタベタが、スイッチ一つでヌルヌルになる

同じく埼玉大学から、制御工学を研究する高崎正也教授の研究室が展示したのは、タイトル「見た目ベタベタ、触るとヌルヌル」と「見た目ツルツル、触るとザラザラ」の2つの機械と、空中で何かに「触っている」感覚を体感できる装置。先の2つは指先で体験する小さい機械ですが、スイッチ一つでタイトル通り、感触がガラッと変わる驚きの体験!このタネと仕掛けは、超音波振動子。「ヌルヌル」の正体は、超音波の小さな小さな波で作り出す「空気の膜」だといいます。そして「ザラザラ」は、超音波振動子のONとOFFを超高速で繰り返すことによって、指先の物に「触る」面積が減り、生じる感覚とのこと。

高崎研究室の超音波振動子盤
空中に「触感」を生じる機械

そしてこの、超音波振動子を一面に何百個も敷き詰めたものが、何もない空中に「触感」を生じさせる装置。この装置の数十センチ上に手をかざすと、なんと超音波を「触れる」のです。研究でも目指されている「触れる」オンラインショッピングの実現に加えて、バーチャル触感の癒しグッズが一家に一台が当たり前になる日も来るかも、なんて想像が浮かびました。

体感できるVR(バーチャルリアリティー)を目指して

中村研究室の全身装置

中央大学からは、精密機械工学の中村太郎教授研究室から「全身装着型力覚提示装置」が展示されました。この大きな装置の関節の代わりになる部品の中には、コイルが入っているそうです。ここに電気を流すと、磁場が生じます。装着した人が関節部品を動かそうとすると、関節コイル内の磁場がちぎられることに抵抗し、その人に重さを感じさせるといいます。流す電力を調節することで「重さの感覚」も調節され、水槽の水をかき上げる感覚やサッカーボールを蹴る感覚を再現できるとのことです。将来的に、より臨場感のあるバーチャルエンターテーメントの開発や運動トレーニング、リハビリなど、多様な応用が期待できるといいます。

株式会社ヘルテックのモーションキャプチャ
こちらのモーションキャプチャは1機=10g程度まで軽量化

今回の全身装置は、重たくて普通には着られなさそうでしたが、まだまだ研究途上。携帯電話が現在のスマートホンに至るまでの経過を思い返すと、何十年後かには、日常的にこういった全身体感型のバーチャル装置が使われているかもしれません。

脳の錯覚がもたらす「触れている」感覚

葭田研究室のVR体験

最後に紹介するのが、東京科学大学の葭田貴子准教授研究室のバーチャルリアリティー体験。よく見るような形のヘッドマウントディスプレイを装着すると、よく見るようなCGキャラクターの女の子。どういう「触る」体験になってしまうのだろうかと、こちらをじっと見つめる女の子の大きすぎる瞳に少し恥ずかしくなりながら、院生インストラクターに言われるがまま、頭をなでる動作を試みました。ん?私、いま「触っている」かも?「彼女の頭を、両手で抱えてみてください」。両手で女の子の頭を包むと、風船のように軽いけど、本当に「触れている」かもと思うような感覚を覚えました。その理由は、研究開発した「装着者の手がCGを貫通せず、ちゃんと「触れている映像」が映し出される技術」によるもの。加工された視覚情報から、脳が「この映像は実体のあるものだ」と錯覚を起こして、本当に触っているような感覚が生じるのだそうです。

葭田研究室のVR体験画面

私の口からはまだ紹介できない体験も、リアルに体感できる技術の開発にも成功しているそうです。これから広くエンターテーメントやシュミレーションでも展開されるかもしれません。この、脳の錯覚で「触れる」バーチャルリアリティーと、空中で「触感」を生じさせる超音波振動子のコラボ研究開発の実現にも期待です。

「10年後の未来」に「触って」みませんか?

「触れる機械展ミニ」会場入り口
「日本再生医療とリハビリテーション学会」の展示も同時開催

葭田先生は、「研究室では、『10年後の世界で当たり前』になる技術を研究しています。どんな未来になってほしいか、一般の人の思いも汲みながら研究を進めていきたいし、そのためには同業者以外の人にも研究をわかりやすく伝えるコミュニケーション力が必要。こういったイベントは学生たちにとっても、とてもいい機会なんです」と話します。「どんな研究も、言葉の力がなくては伝えられもせず、認められることも適いませんから」とも。その教えの通り、院生インストラクターさんたちが、知識のない私にも、体験に来た小学生にも、理解出来るよう一生懸命言葉を選んで説明している姿がとても印象的でした。

ガラパゴスケータイ
タンスに眠っていたガラパゴスケータイ

余談ですが、もう20年近く前に深夜の電車で、宴会帰りらしき中年男性に「携帯電話会社の者なんだけど、どういう機能が欲しいか若者の意見を聞かせてほしい」と声をかけられたことがあります。私は冗談のつもりで「カバンの中身を軽くしてほしい」と答えました。それが今、書籍もお金も電子化され、スマートホンがあればカバンの中身が空っぽでも出かけられる時代です。「自分の声が届いたのかも」なんてそんな訳ないと思いつつも、たまに自慢ネタにしています。今回の「触れる機械展ミニ」は、技術をどんなことに生かしたいと考えるか、研究者と想像を共有できるまたとないチャンスでした。「10年後の当たり前」、一足先に「触って」語ってみたくはありませんか?「触れる機械展ミニ」次回開催も待ち遠しいです!




将来を担う子どもたちにぜひ体験してほしい展示です。次回は事前告知の記事を配信できればと思います!

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