土呂で開催された「音のないサッカー」を取材してきました

こんにちは。

 大宮駅東口でコワーキングスペース7F(ナナエフ)を運営する株式会社コミュニティコムによる地域メディア媒体「大宮経済新聞・浦和経済新聞」のライター・コバヤシと申します。

 2026年2月7日、土呂にある埼玉県立特別支援学校 大宮ろう学園で開催された「ウォーキングフットボール サイレンス」を取材してきました。記事で紹介しきれなかった、本イベント主催者の思いや取材時のこぼれ話などを取材後記としてご紹介します。

「ウォーキングフットボール サイレンス」とは

 皆さんは「ウォーキングフットボール」をご存じでしょうか。単語から想像できる通り、歩いてプレーするサッカーです。2011年7月、イングランドで55歳以上の高齢者の健康促進を目的に行われたサッカーが原点とされ、日本には「日本ウォーキングフットボール連盟(JWFL)」という一般社団法人が存在します。私自身、取材後に知り、とても驚きました。

 日本では、「ウォーキングフットボール」をイベントとして企画する団体が非常に多く、今回参加した方の中にもJWFL主催の「ペンギンズCUP」に出場予定で、大会に向けて意気込む人がいました。

 今回は「サイレンス」として、耳の聞こえない人も参加できる構成でしたが、この日参加したのは60代の一般参加者2人と、30代の知的障害者1人の計3人。主催の特定非営利活動法人ぺらーだの代表、安齋さんを含めても4人でした。取材中、「コバヤシさんも一緒にやりましょう」と声をかけていただき、サッカー未経験の私も所々でプレーしながら取材を行いました。

試合間に参加者たちが歓談する様子

サッカーで繋がる人の輪と主催者の思い

 記事でも触れた通り、主催の安齋さんは現在、支援員として働きながら、空いた時間にイベントを企画し、サッカーを通じて活動しています。学生時代にプレーしたサッカーの経験や、スポーツクラブ勤務の経験を生かし、NPO法人ぺらーだの立ち上げに踏み切ったとのこと。

 安齋さんは「ウォーキングフットボールに限らず、障害者がスポーツイベントに参加するのは非常にハードルが高いです。『うちでは対応できません』と断られるケースも多くあります。でも本人も保護者も、『運動したい・運動させてあげたい』と考えている人は多い。そういう人たちの受け皿になれたらいいと思っています。だから、自分にできることはなんでもやろうと考えています」と語り、続けて笑いながら「イベントはすべて無償です。今日も午後から支援員の仕事があるので、本当に空いた時間でやっています。妻には『優しすぎるよ』と呆れられることもあります」と苦笑い。口コミで安齋さんを知り、個別指導の相談を受けることもあるそうです。

 活動の原動力を尋ねると、安齋さんは後頭部の手術跡を見せて「数年前に脳梗塞を患ったことがあるんです。今は元気に動けますが、そのときは将来動けなくなるかもしれない、障害が残るかもしれない、と考えました。だから、元気なうちにできる限りのことをしたいと思うようになりました。もうひとつは、障害者の支援員でありながらスポーツを教えられる人は意外と少ないことです。好きでやっていて、それで誰かが喜んでくれるなら、それだけで幸せです」と胸の内を明かしてくれました。

 今回参加した30代の知的障害者は安齋さんと約2年前に知り合い、それ以降のウォーキングフットボールのイベントにも数多く参加しています。60代の男性も安齋さんの知り合いで、直接声をかけられ参加。この男性が他のイベントで知り合った60代女性を誘い、この日の3人の参加者が揃った形でした。安齋さんと女性は初対面でしたが、共通の知り合いが多く、イベントの思い出話などで雑談に花が咲いていたのも印象的です。

ウォーキングフットボールを通じてできた新たな繋がりと絆

取材後記:文字の大切さ

 今回のイベントは、2人1組の2対2で、前半・後半6分ずつ行われましたが、得点は記録していませんでした。とにかくボールに触れ、シュートを楽しむことが趣旨です。また「サイレンス」ということもあり、話すよりも表情で意思を伝えるシーンが非常に多く見られました。ほとんど音がしない体育館でしたが、人の温かさは常にそこにあるように感じました。

 試合の休憩時間には私も混ぜていただき、歓談を楽しみました。その時、主催の安齋さんの話が印象的でしたので、ひとつ紹介します。聴覚障害の方に関する話です。

 「以前、聴覚障害者の方とお話したときの話ですが、その方は漫画が大好きなんです。だからたくさん漫画を読むそうです。ただ、好きな漫画がアニメになると、とてもつらいと仰っていました。口の動きで『多分このセリフだな』とは予想できるそうですが、漫画にないアニメオリジナルのストーリーは全くわからないそうです。字幕がつくようになってからは変わったとも話をしていましたが、それでも今もアニメではなく漫画をよく読むと話していました」。

 この話は、聴覚障害者が「口の動きで何を言っているかがわかる」という話から始まりました。ただ、ライターとして日々文章を書いている私にとって、動画コンテンツが溢れる現代、若者の活字離れなども言われる時代背景を考えると、文字という文化はまだまだ重要であり、とても素敵なものだと改めて感じました。たまには大切な人に、言葉ではなく手紙で伝えるのも良いのではないかとも思いました。今、私が書いているこの言葉たちも、安齋さんが活動を続ける理由のように誰かのためになっていたらうれしいです。そんな温かい気持ちにさせてくれる取材であり、人との出会いでした。

参加者全員に配られた耳栓。心が通じ合うことの温かさを感じた取材だった


コワーキングスペース7F(ナナエフ)を運営する株式会社コミュニティコムでは、地域の情報をお届けするメディア媒体「大宮経済新聞」「浦和経済新聞」を運営しています。記事を読んでくれた地域の人が「こんなイベントがあるなら行ってみよう」「こういう施設がオープンしたなら見てみよう」「自分も同じようなイベントができるかも」と何かしらのアクションを起こすことで、地域の経済が少しでも動けば、地域を盛り上げることにつながります。