コワーキングスペース7F 大学生アルバイトスタッフ 新木優花さん
コワーキングスペース7F アルバイトスタッフ・インターンシップ・正社員スタッフ募集
コワーキングスペース7F 大学生アルバイトスタッフ インタビュー
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新木優花さん
7Fスタッフは2013年8月から2014年6月までの約1年間。7Fスタッフを卒業してからは、7月からカンボジアのアンコールワット遺跡近くのホテルでアルバイト。10月からはアメリカの西海岸(サンフランシスコ)にてインターンシップ予定の大学生です。
(この記事は2014年8月時点のインタビューです。)
埼玉県さいたま市の大宮駅東口徒歩1分にあるコワーキングスペース7Fでの大学生アルバイトスタッフへのインタビューです。
■ コワーキングスペースとの出会い
私は大学の授業で「コワーキングスペース」という新たな業態があることを知りました。初めて聞いた時、オフィスを共有する働き方ができるということ、そして会社にいなくても仕事ができる時代なのだと驚きました。なんとなくその言葉がひっかかり、授業の後に大学の図書館で関連する本がないか探し、見つけたのが『つながりの仕事術~「コワーキング」を始めよう (洋泉社新書)』でした。
夏休みからアルバイトとして働けないかと思い、大学にあるパソコンで「コワーキングスペース アルバイト」で検索かけてみたら、7FのHPが一番トップに表示されました。ちょうどアルバイト募集の告知をかけていた期間だったらしいです。大宮駅から徒歩1分という自宅から近い立地で、かつ有給で求人をしているコワーキングスペースが他に見つからなかったこともあり、アルバイトに応募しました。当時、一度も行ったことがない場所でなぜいきなり働きたいと思ったかはわかりませんが、当時の直感を実際の行動に移せたことが、振り返ってみてとても良かったと思います。
面接した日が初めてコワーキングスペースに、7Fに来た日でしたので、どこが良くて、どこが悪いのかもわからないというところからのスタートでした。採用されてスタッフに入った初日は、ひとまず、飲料水が入ったダンボールを、利用者から見えないように収納したことを覚えています。
初めて仕事に入った時、オーナーの星野からは、「7Fはまだ発展途上の段階で、良くできているところもあれば、改善の余地があるところもある。新しく入り、見慣れていないからこそ気になるところを良くしてほしい」と伝えられました。
私が働き始めた当時、毎日利用者がコンスタントに来ていたので、スペースとして既に完成しているように見えました。しかし、東京や名古屋、大阪を中心とした他のコワーキングスペースを見学・利用して見てまわるうちに、他にはない7Fの良さ、また不足している点が見えてくるようになりました。特に渋谷、名古屋、大阪はコワーキングスペースが数多く出店している激戦区とされていましたから、この地域で創意工夫・切磋琢磨して、結果的に生き残っているスペースから、方針や企画など大変勉強させてもらいました。もちろん、立地の違いや目指している方向が異なる(多店舗展開をしている、行政施設の一部である等)は考慮にいれなければいけません。
月一の頻度で開催されているコワーキングスペース運営者勉強会には、毎回参加している方から、新しくコワーキングスペースを開業した方、コワーキングスペースの研究をしている方、コワーカー=利用者の方まで多様な人が参加していました。
コワーキングスペースのオーナー同士の横の繋がりから、こうした勉強会や新たなイベントが生まれる可能性もあります。
■ 人と人を繋げた話
コワーキングスペースの特徴の一つに、多様な人が集まっているために、新しい何かが生まれそうな独特の雰囲気があるということがあります。スタッフは、利用者が持つ「こういう人に出会いたい」というニーズを汲み取り、また人を紹介するというマッチングの潤滑剤としての働きが必要になります。
利用者に関する情報も、交流するうちにスペースのスタッフ側に集まってくるので、それをどのように、またどの利用者に伝えるかを見極める必要があります。学生の視点からなので、本業としてビジネスマッチングをしている方とは異なるやり方かもしれませんが、利用者のお仕事や携わっている活動の話を聞いてお繋ぎするのと、開催したイベントの時に講演者・参加者の方同士をつなげる2つのパターンがあります。
例えば、埼玉県でギター教室を経営されている方から、同業者同士で勉強会を開いていきたいというお話を聞きました。7Fでは、音楽関係の仕事をされている方は多くありませんでしたが、会社のCMソングを作詞・作曲して納品している方が1人だけ思い当たったのでご紹介しました。2人とも毎日7Fに来るわけではないので、Facebookのメッセージで私を含めた3人のチャットを作成して、経緯や理由を含めて紹介します。繋いだ2人が会話しはじめるのを見届けたあと退出したので、どんなやりとりが行われたか詳しくは知りませんが、後日7Fで直接会って打ち合わせをしている様子でした。
フリーランスや個人事業主の方だと、組織に属することで会社員が得られる人との出会いが少なくなります。そのため、自分からイベントに参加したり、人が集まるコワーキングスペースを利用して働いたり、積極的に繋がりを得ようとしている方がいます。コワーキングスペースには、ちょっと押しの強くてお節介な仲人さんのように人を紹介するオーナー、もしくはスタッフが向いていると思います。
■ 7Fでのお仕事
7Fでの主な仕事は、主に来店したお客様の受付をする対応、スペース空間を居心地よく過ごしてもらうための作業です。7Fには、月ごとにまとまった金額をいただいている月額会員と、単日のみ利用するビジター会員の2種類の会員さんがいます。ビジター会員の場合、入室時には、名前、料金プラン、入室時間、そして退出する際には退室時間を記入してもらいます。利用時間内なら何度でも外出して戻ることも可能です。プロジェクターやスクリーン、ホワイトボード、シュレッダー、スキャン、PC、文房具 など貸し出し可能なものを要望にも対応します。基本的にあるものはすべて無料で貸し出しが可能です。また告知のチラシをスペースに置くお願いや、イベント・勉強会を開催したい方の相談に対応します。
最も重要な仕事の一つは、初めて来てくれた方に利用方法やどんな場所であるのか説明することです。初めての方の中には、他のコワーキングスペース等で利用に慣れている方もいれば、「ここは何する場所なんですか?」「コワーキングスペースって何ですか?」というホームページで見て、知人に勧められて来てみたといった方もいます。コワーキングスペースという言葉自体、まだまだ認知されていないんだなぁと感じる瞬間です。お客さんに応じて理解しやすいように言葉は変えていますが、「長居できるスターバックス」「話しながら作業が出来る図書館のオープンスペース」という説明が良い線いっているなと思います。実際に利用していくうちに「これがコワーキングスペースなんだ」という理解をそれぞれが得ていくと思うので、まずは利用方法、そして居心地よく過ごしてもらうための工夫や交流が大切です。
最近あったことや仕事のことなど、お客様と何気ない世間話をすることもあります。そういったお客様との会話から、「この人とあの人を繋げたら面白いんじゃないか」というひらめきを得ることもあるので、お客様との交流はスタッフにとってとても大切な業務の一つでもあります。
■ イベントを主催した話
地域活動に参加していた際、団体の代表から資金がという話を聞いていたこともあり、地域活動をしている利用者のために何かイベントを開催したいと思いました。このことをオーナー星野に相談したら、地域の活動に特化したクラウドファンディングであるFAAVOの方と知り合いということで、紹介してもらいました。埼玉県庁から共助社会創り課の方もお招きして、埼玉の抱える問題・市民活動への期待や援助のお話、FAAVOの方からは地域活動の資金を集めるためのツールのお話をしてもらいました。その後、実際にFAAVOに応募するという想定で参加者にグループごとのプロジェクトを考えてもらいました。大宮公園にWi-Fiを設置するというアイデア、子育て中のお母さんの職場復帰を援助するためのイベントを開くというアイデアなど、多様なプロジェクト案が生まれました。講演者のお二人から良い点や、実現のためのアドバイスももらいました。後日、イベントの参加者からクラウドファンディングを使ってプロジェクトを立ち上げたという嬉しい報告もありました。
また、7Fはフリーランスや個人事業主の方が仕事場としても利用していますが、フリーになりたい、ITを勉強中だという主婦の方も多く利用しています。そこで、これからフリーになるつもりの方を対象に、フリーランスの先輩から実際の経験や考えを聞く座談会イベントを企画しました。当日は生徒の女性を中心に、男性で既にフリーとして働いている方も参加してくれました。
自分のやりたいこと、将来の目標や夢、漠然としたもので良いから周囲に発信することが、実現への道を近づけるのだと思います。「こんなことがやりたいけど、自分だけの力では無理…」という方は、オーナー星野をはじめ、7Fの利用者の方々の力をかりることが出来ます。
また7Fでイベント・勉強会を開催したいという方のイベントサポートという仕事もあります。以前お会いした方は、講演会を開きたく、講師の方への交渉はご自身で既にされていたのですが、企画した経験がないため告知や当日の運営に不安があるのことでした。そのため、Facebookでのイベントページの立ち上げ方や告知文、当日の流れ等を一緒に考えさせてもらいました。また7Fに出入りしている利用者の方で、イベントに興味がありそうな人をイベントにお誘いし、HPでイベント紹介の記事を掲載するなどしました。海外にいたため当日のお手伝いはできなかったのですが、後日「イベントも上手くいきました。ありがとう!」とメッセージをいただきました。こういった方には、スペースを貸すだけではなく、実現するためのお手伝いもしました。
■ 地域活動と大学生
私の場合、お金はないけど時間はある、しかし地域活動にどうやって関わっていけばいいかわからない(から何もしない)という理由から、7Fに来る前まで地域でのボランティアやイベントの運営側に参加したことはありませんでした。地域に関わるようになったきっかけは、地域イベントの主催者の方から、イベントで剣道を子どもたちに教えないかと誘われたことがきっかけでした。この団体は、さいたま市を中心に活動しており、たびたび7Fを打ち合わせなどの拠点に利用していました。
社会人の方の視点は大学生に比べ、より広く・柔軟で、さまざまな活動や団体とのつながりがあります。彼らは、「その能力あるのならこんな形で役立てることができる」というアイデアから、新たな活動への”入り口”を大学生に与えてくれます。
私自身が大学生ということもあり常々感じることですが、大学生には大学受験や就職活動を通して、綺麗な新卒ルートへの理想というものがあると思います。社会人になってから理想と現実のギャップに苦悩する話は、新卒として働き始めた同級生からよく聞きます。「留学しないと…」「資格持ってないと…」「インターンシップ受けないと…」という「~~しないと」という言葉をいたるところで聞きますが、これらは自分にできることや新たな経験を増やして“即戦力”になろうと焦っているのではないかなと思います。もちろん、大学生のうちに自分の可能性を新たに広げることは大切ですが、それに躍起になるあまり、今までの人生で培ってきた能力や経験に自信を無くしてはいないでしょうか。
自分では気づいていないだけで、今まで培ってきたものが十分に社会の役に立ちますし、また自分の能力の活き方・どんな形で役に立つのかを知ることは自信と実績になります。今までの経験などの”点”が、振り返ってみると”線”になると実感しました。
■ 台湾のコワーキングスペース訪問
2013年9月に開催されたコワーキングスペースカンファレンスに参加するために台湾から来日していたペイチさんが、7Fに見学しに来てくれました。同年の10月に台中市でコワーキングスペース「好伴(ハオバン)」をオープンするとのことで、オープンする前に国内外のコワーキングスペースを訪問しているとのことでした。開業資金は、クラウドファンディングで集めました。
台湾の台中市は、台湾では3番目に人口が多く気候も穏やかな都市ですが、地元の若者が台北や海外に働きにでていってしまい、高齢化・過疎化という問題を抱えています。中心街を離れると、空きビルも多くあります。こういった事情もあり、好伴のビルオーナーは相場よりかなり安く賃貸してくれているそうです。台中に拠点を構えるNPO団体と連携して、イベントの企画や台中市の課題解決会議も定期的に開催しているようです。地元に根付いたコワーキングスペースです。
オーナーは、ペイチさんともう一人の女性です。大学の同級生で、卒業後に起業しました。まだ23歳です!若者離れという問題を抱える台中において、彼女たちの出現は驚きだったのでしょう。地元のラジオや新聞にも取り上げられ、それがきっかけとなり遠方から好伴に訪ねてくる人も多いそうです。
内部は、キッチン、冷蔵庫、食卓テーブル、シャワーもあるなど、かなり家に近い作りになっています。またオーナーのご両親がコワーキングスペースに出入りしていて、ペイチさんのお母さんはキッチンで夕飯を作って、その場にいるお客さんにも振るまっていました。家族ぐるみの付き合いを大切にする台湾の文化が、コワーキングスペースにも現れています。
Startup Weekendという起業のアイデアソンイベントの台中会場にもなりました。ペイチさんの友人で、イベントにも参加していた男性が、台南にもおいでよ!と誘ってくれたので、次の日は夜行バスの予約をとって台南へと向かいました。バス停下りてすぐにあるというコンビニで待ち合わせの約束をします。時間なんと朝の4時!それから一日かけてバイクで台南市内を案内してくれました。気を遣って、女性の友達も呼んでくれて、そうしたら友達の彼氏も来たり、仕事帰りの友達が加わったりとで、最終的には8人という集団になっていました。最終日は、ペイチさんと好伴で知り合った友人と「看見台湾」というドキュメンタリー映画を見ました。
コワーキングスペースのオーナーと知り合いになると、そのオーナーが持っている人脈から力をかしてもらえます。結果的に、その地域で友達ができたり、海外に居場所ができたりしますので、国際的に活動したい人は各国でお気に入りのコワーキングスペースを見つけられると良いと思います。
■ 卒業と今
6月末に7Fを卒業した後、カンボジアのシェムリアップというアンコールワットのある町でホテルスタッフ&ツアーガイドとして有給の大学生インターンをしています。きっかけは、カンボジアの首都プノンペンで働いている知人に求人を紹介してもらったことです。実は、彼と知り合ったのも7Fでした。また、オーナー星野を通じて知り合った方が、シェムリアップの「クロマーヤマト」というゲストハウスの元オーナーだったらしく、私のシェムリアップ行きを知りメッセージをくれて、今のオーナーの方を紹介してくださりました。ここでも、家とオフィス以外でいつでも来て誰か知り合いがいる”居場所”を作れる予感がします。
今まで7Fで人と人を繋げるという仕事をしていましたが、辞めた後でもこうして7Fで出会った方々から助けてもらっています。スタッフとして関わったのは10ヶ月半と短い間でしたが、自分の人生に大きな影響を与え、また今後も与えつづけてくれると思います。関わり方は変わりますが、7Fで受けた恩を今の自分にできるよう、形を変えて貢献していくつもりです。