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埼玉県立近代美術館で開催された「障害者アート企画展」を取材しました

障害者アート企画展 展示作品

大宮駅東口でコワーキングスペース7F(ナナエフ)を運営する株式会社コミュニティコムによる地域メディア媒体「大宮経済新聞・浦和経済新聞」のライターのせいやです。

今回は、埼玉県立美術館で2023年11月28日〜12月3日の5日間開催された「障害者アート企画展」を浦和経済新聞として取材しました。

本編記事ではご紹介できなかったインタビューの内容やオープニングセレモニーの様子などを「編集後記」としてご紹介します。

浦和経済新聞の記事はこちら

北浦和の県立近代美術館で「障害者アート企画展」 600作品超展示

https://urawa.keizai.biz/headline/858/

祝14回目!オープニングセレモニーのテープカット

障害者アート企画展 テープカット オープニングセレモニー
テープカットの瞬間

「テープカット初めて見た!」私が今回の取材で一番印象に残ったのは、テープカットでした。というのも、私は人生でテープカットを見たことがなく、テレビの世界の話だったからです。そんなテープカットを、埼玉県立近代美術館で見ることができるなんて驚きでした。

テープカットが行われたのは、毎年さいたま市で開催され、今回で14回目にもなる「障がい者アート企画展」です。なんと、総勢103名の作家と600を超える作品が展示されていたんだとか。(数えても数え切れないほどたくさんの作品が展示されていました)

 

社会福祉法人みぬま福祉会 代表 挨拶
みぬま福祉会代表挨拶

なぜ、103人もの作家による展示になったのかというと、新潟市とさいたま市の展示や関東甲信越地方の作家の作品も展示するという、新しい試みがされたからです。私は、今まで障がいを持ちながらアートな活動をされている方は、いても県に数人程度だと思っていたため、自分の世界は狭いことを実感しました。

さらにオープニングセレモニーでは、展示を監修した方が挨拶をされたのですが、そこでも私は「監修!?」と驚きます。

 

障害者アート企画展 監修者 挨拶
監修者挨拶

障がい者アート展についてしっかりと把握できていなかったため、展示に監修がつくことを想像していませんでした。ですが、展示会場に足を踏み入れた瞬間に、私が想像していた作品へのイメージはバキバキにぶっ壊れます。

クオリティ高い作品の数々

障害者アート企画展 展示 様子
展示会場の様子

なぜなら、テーマや内容・価値観にとらわれない作品の数々が、私の心をハンマーで叩き割るくらいの衝撃を与えたからです。はっきり言って、美術館やデパートなどの企画展と遜色はありません。はたまた、障がい者アート展と言われなければ、障がい者の方が制作したと分からないくらいクオリティが高い作品ばかりです。

 

クリスマスをモチーフにした作品 障害者アート企画展
christmasをモチーフにした作品
今年度は新潟市作家の作品も展示された
新潟市の作家作品も展示された

障がいがある方が作品を作る時もしかすると苦労することなどもあるかもしれませんが、出来上がったアートには障がいの有無による壁はないと感じました。障がいのある方が創ったと感じ取れる作品もありますが、それもまたいい味を出しており、シンプルで分かりやすい、芸術素人の私でも分かる親切な作品でした。

ライターが個人的にお気に入りの作品

障害者アート企画展 作品 本
ライターお気に入りの作品

特に、クオリティが高くてすごいと感じた作品は、本を切り抜いて創られたアート作品です。1冊の本のページをくり抜いて絵にしたような作品となっていて、本のページで奥行きを出しています。作品を鑑賞しているときに、監修者の方とお話をさせていただいたのですが、2人そろって「これはどうやって創っているんだろう」と首をかしげました。

作り方はおそらく単純で、ページをひたすら切り抜く作業なので、芸術素人の私でも作れそうな内容ではあります。しかし、作品を見ると「こんな作業とてもできない!」と感じてしまいました。というのも、重なり合わないページの1枚1枚が、ピタッと1ミリのくるいもなく一致しているからです。

 

例えば、葉っぱの模様の部分は、本の底まで数10枚の紙が重なっています。本を開けば分かると思うのですが、ページをめくると位置が少しずつ横にずれるため、ただ縦に紙をくり抜いても、切り抜かれた部分が重なり合うことはありません。つまり、本の開く角度や設置される最終的な位置まで考慮した上で、作品が創られたということです。この作品には、脱帽を3回したくなるような驚きを覚えました。

作家インタビュー

さて、2人の作家さんに作品に関することや展示会についてインタビューしてきたので、それぞれをご紹介していきます。アートや展示に対する想いを聞くことができましたので、ぜひ読んでください。

人形作家関口直子さん

ドラマのようなストーリーを持つ「フキゲンちゃんとキゲントリ君」を制作した人形作家の関口直子さん
人形作家関口直子さん

1人目は、埼玉県でご活躍されている人形作家の関口直子さんです。関口さんは、ストーリー性のある個性豊かな人形をたくさん展示されていました。私が特に好きな作品は「フキゲンちゃんとキゲントリ君」という人形で「あーなるほど」と思えるようなエピソードが込められています。

 

フキゲンちゃんとキゲントリ君
フキゲンちゃんとキゲントリ君

まず、女の子(フキゲンちゃん)が怒っている理由は、男の子が遅刻してきたからです。ちょっとの遅刻でそこまで怒らなくてもと思ったのですが、この男の子(キゲントリ君)は真夏の猛暑日にも関わらず、2時間遅刻したそうです。(それは怒りますね)女の子はメイクが崩れ、肌も焼けてしまったという理由で、フキゲンちゃんになったそうです。(2時間も待つ女の子もすごいなと思います)

それに対し、2時間遅刻した男の子は、道中の道端で摘んだ花で機嫌をとろうとします。だから、キゲントリ君なんですね。

みなさんもデートのときは遅刻をしないように注意しましょう。

 

障害者アート企画展 人形 関口直子
関口直子さんの人形作品

また、関口さんは自身の障がいについて「私にとって障がいを持つことは青天の霹靂で、終わりであり始まりだった」と言います。というのも、障がいを持ったことで終わりと捉えられる部分がある反面、今回のような展示会などを通じて人との出会いや関係性が深まっていったからです。

そして「社会には、まっすぐに根を張った木だけではなく、雑木のような気が多いほど豊かさにつながる」と語りました。どういうことかというと、根をまっすぐに貼ってきれいに立つ木しかない山は、雨風によってすぐに崩れてしまいます。一方で、さまざまな理由で変形しながらも地面に深く根を張る雑木が多い山は、そう簡単な雨風では崩れません。つまり、私たちが生きる社会も同じように、色んな苦労や挫折をしながらも雑木のように強く根を張る人たちがいることで、安定した社会になっているということです。

毎年展示!小幡海知生さん

ステンドグラスを連想するよなカラフルな絵画「つなぐⅡ」を描いた小幡海知生さん
毎年作品を展示されている小幡海知生さん

続いて2人目のインタビューは「つなぐⅡ」という様々な色や模様の手が描かれている絵を出展された小幡海知生さんです。小幡海知生さんは、障がい者アート企画展に毎年出展されているベテラン作家さんで、埼玉県以外にも東京で展示を行ったりなど、活躍の場を広げています。

作品の特徴は、カラフルでキラキラした色合いと柔らかいタッチでしょう。キルト作品に影響を受けているそうで、教会のステンドグラスのような模様がきれいです。私は、「つなぐⅡ」というタイトルと「手」がたくさん描かれていることに惹かれました。

 

障害者アート企画展 つなぐⅡ 作品 小幡海知生
つなぐⅡ

そんな小幡さんは「多くの人が展示に来てくれることがモチベーション」になっていると話されており、障がい者アート企画展に多くの方訪れるのを願っておられました。というのも、小幡さんは自身の作家活動を通じて「障がいのある人に元気や活力を与えていきたい」と話されているからです。

たしかに、障がいというものはどうしてもハンディキャップとなってしまうと思いますが、活発に活動したり、作品を通じて多くの方に元気を与えているのを見ると、単純に絵を見るだけという以上に価値が生まれていると思いました。

また、「障がいを持つ人にアドバイスもしていきたい」と語っておられるので、悩みがある方は、ぜひ小幡さんの作品を見てほしいと思います。

 

私は障がい者アート企画展を通じて、価値観や障がいについての考え方が変化しました。そして、自分の世界や視野が狭いことを実感し、もっと早く展示に訪れておけばよかったと思うほどです。障がい者アート展は毎年開催されているので、障がいの有無に関わらず、ぜひ足を運んでください。


大宮経済新聞浦和経済新聞の運営会社である株式会社コミュニティコムの代表の星野邦敏は、福祉作業所で作られたクッキーを販売するなどの活動を行う「認定NPO法人クッキープロジェクト」の理事を務めている縁もあり、株式会社コミュニティコムは障がいがある方の活動を身近に感じています。福祉作業所で作られた雑貨など、びっくりするほど素敵な物も多くあります。障がいがある人の活動をもっと多くの人に知ってもらえるよう、大宮経済新聞浦和経済新聞でも取材を続けていきます。